【Fab12レポート】未来を創造する 〜その3〜

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Fab12の中で大きな位置を占めていたトピックの1つとして、Fab City構想があります。FabLab BarcelonaのTomas Diezが中心となって進められている大きなプロジェクトで、2054年を目標に地域の行政や企業も巻き込んだ新しい都市モデルの構築を目指しています。言うまでもなく、ここで提示されている新しい都市モデルとは、これまでに述べた「循環型社会」にリンクします。

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FabLab発足当初からの活動コンセプトとして、大量生産/大量消費モデルから適量生産/適量消費モデルへの移行というものがありました。その実践として自ら作る(DIY)、周りの人と一緒に作る(DIWO)という考え方が根底にあり、FabLab内外の活発な活動が現在のメイカームーブメントを形作っています。現在のメイカームーブメントにも様々な既存企業、あるいはスタートアップ企業が参入しています。また世界中でMaker Faireのようなイベントが開催され、メイカー同士のコミュニティ形成の場があります。Fab City構想とは、いわばこうした「ムーブメント」を「地域社会のライフスタイル」へと定着させる活動と言えるでしょう。その社会では、最早FabLabも3Dプリンターもセンセーショナルなものではなく、大きなパズルの1ピースに過ぎず、Fab City構想を実践する1機能1要素として定着し、誰もがその機能を活用するものになっています。ある意味ではFabLabが目指してきたものづくりの敷居の低さの究極系とも言えるでしょう。
 
とても壮大な目標を掲げているFab City構想ですが、提唱者のTomas Diezが紹介したSmart Citizenは、Fab City実現に向けたアプローチを理解する好事例でしょう。Arduinoベースのオープンソースハードウェア(及びAPI)であるSmart Citizenは、街中の環境データを取得するIoTデバイスです。気温や湿度、CO2濃度などのデータを取得し、市中に点在する各デバイスから集積したそれらのデータ(いわゆるビッグデータ)を地域社会の運営に活かすというものです。オープンソースなので、個人でも企業でも新たなSmart Citizenデバイスの開発や、取得されたデータの利用が可能です。交通量調査や流通調査を行う専用のデバイスを開発することもできるでしょう。取得されたデータは地域企業や行政の運営を助けるだけでなく、教育分野や研究分野でも有効なリソースになり得るでしょうし、それらのデータを活用した新たなアプリやサービスが生まれるかもしれません。
 
Fab City構想とは、従来でいうところの産学官に、個人としての「民」を同列で加えるような取り組みといえます。そこでのFabLabは、そうした「民」がFab Cityに加わるためのアクセスポイントとして、同時にコミュニティスペースとして機能するでしょう。Fab12が終了した現在、Fab Cityには世界16都市が参画しています。来年のFab13開催地のサンチアゴ(チリ)やFab14開催地に決まったトゥールーズ(フランス)も今年加盟しました。4日目のFab Symposium中に行われた加盟式典は、新たに参画した7都市の代表(主に各都市の市長)のビデオメッセージなどを背景に執り行われました。

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今回のFab12中に、Fab Cityに参加しているジョージア(旧表記グルジア)や、参加に向けて活動しているロンドンの代表者と話をする機会がありました。ジョージアはFabCityに加盟している中で唯一、都市名ではなく国家名で参加しています。GITA(Georgia’s Innovation & Technology Agency)という組織を中心に、この1年で国内に21ヶ所のFabLabを開設(+5ヶ所が準備中)しており、地方行政を超えて国策としてFab社会を進めています。逆にFab City参加を目指して活動しているロンドンの代表者は、市内のメイカースペース代表者を始めとするワーキンググループを作り、ロビー活動を続けているとのことです。運良く、そしてある意味では対照的な状況下にある代表者とお話ができましたが、共通していたのは「何をするかはまだまだこれから」ということでした。「循環型社会」という大目標は共通しているものの、そこに至るプロセスに答えはなく、それぞれの地域社会に求められている取り組みを見つけ、実践していくとのことです。

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2014年のFab10(バルセロナ)において、トリアス市長(当時)の署名に基づきバルセロナは最初のFab Cityとなりました。冒頭に述べた通り、このFab City構想は40年かけた挑戦として2054年の達成を目標に掲げています。社会状況も構成員も大きく様変わりしているであろう40年後の世界に、Fabの理念は何を残すのか。挑戦はまだ始まったばかりです。

<続く>

文・井上恵介

2016-08-16 | Posted in blog, Events, ReportNo Comments » 

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