【Day3】TEDxDiliを終えて
こんにちは、FabLabShibuyaの井上です。長くて短い1日が終わりました。感想等はこのレポートシリーズの最後にまとめるので、今日のレポートは概ね淡々と進めます。
リード・オーガナイザーのGabrielaさんの挨拶から始まったTEDxDili。会場はほぼ満席で、様々な人種・バックグラウンドの方々が来場しました。
会場の外にはMakerBot Replicator Miniの他、FabLabShibuya・FabLabFujisawaのユーザーさんからお借りしたサンプルも並べ、初めて3Dプリンターを目にする現地の方々の耳目を集めました。
(Very Special Thanks to MakerBot、近藤さん、KISEさん!!)
プレゼン前から喉が潰されるんじゃないかという勢いで、色々な方が質問してきます。
「この3Dプリンターはいくらなんだ?」
「材料はどうなってるんだ?」
「これぐらいのものをプリントしたらどれくらい時間がかかるんだ?」
などなど
(Photo taken by Marfim Guimaraes)
日本人の方が運営されている、M3という現地のラジオ局の取材も受けました。
会場全体がアップリフティングな雰囲気に包まれる中、プレゼンテーションは進んでいきます。午前中のFirst Sessionでは4組のプレゼンターが登壇しました。
トップバッターは歌と読み聞かせを組み合わせた独自のパフォーマンスで活動しているHaktuir Ai-Knanoik。メンバーはまだティーンエイジャーなんじゃないかと思いますが、各地で講演を重ね、既に3冊の絵本もリリースされています。現地でも注目の若手パフォーマンスグループだそうです。
オーストラリアのクラリネット奏者・Ros Dunlopさんは、東ティモールで開催されたコンサートで訪れた際に触れた現地の音楽に感銘を受け、フィールドレコーディングを通じて過去9年間の研究を続けてきました。文化圏や言語・奏法が異なっても、音楽を通じてコミュニケートできることを、実例を交えて語られました。
オライリーから出版されている”Tinkering”の著者で教育者のCurtis Gabielsonさんのプレゼンは、我々でも頭を悩ますような数学や科学の問題を、学校に行ったこともない東ティモールのおばあちゃんがその答えを知っているといところから始まります。カゴを編んだり塩の精製といった日常生活の中からそうした答えを見出しているといった実例を交え、テキストベースではなく、手を動かして学ぶことの重要性を説きました。
Ego Lemosさんは現地でも有名なミュージシャンであると同時に、持続可能な土地の開墾方法や農業について、農家や地域コミュニティー、学生向けに指導をするNGOを主宰されています。小学生とその先生を相手に進めている現在のプロジェクトでは、彼らの校庭で農業をやらせることで、子供が農業を学ぶプラクティカルな内容になっていると同時に、学校給食の不足を解決しています。
First Sessionが終わり、ランチブレイク。
いきなりココナッツが渡されました。
正直、これまでこうしたココナッツジュースを美味しいと感じたことはあまりなかったのですが、有名なココナッツ農家のものらしく、味が濃くてジュースの量も多い。あまり意識してきませんでしたが、ココナッツも農作物としてピンキリあるんだな、と感じました。
で、Second Sessionの1番手で井上が登壇します。
(Photo taken by Marfim Guimaraes)
昨日のリハで急遽3Dプリンターを壇上で動かし、実際に出力をしながらプレゼンをすることが決まり、ちょうどプレゼンが終わるくらいのタイミングで出力が終わるようなモデルを出力しました。
場内の冷房がよく効いていたためか、それまでに出していた以上の時間がかかってしまいました。
プレゼン中にスマートに出力が終わらなかったりもしましたが、次のプレゼンターとの間に挟まれた動画の間に終わったため、アディショナルタイムをもらって壇上で紹介することができました。
TEDxのロゴをプリントさせて、壇上でリード・プレゼンターのGabrielaさんにプレゼントしました。拍手が湧いてホッとしました。
井上の次にプレゼンをしたDulce Soaresさんは東ティモールではまだ珍しい女性エンジニアで、学校や未開地の水質改善の活動をされています。プレゼンの中で、彼女が現在進めている衛生環境の良いトイレの開発プロジェクトを紹介されました。
休憩を挟み、最後のThird Session。
弁護士で社会活動家のKon Karapanagiotidisさんは、人種差別や性差別から発生した暴力によって難民化を余儀なくされた人々の人権について語られました。現在「難民」というとシリアを思い浮かべますが、Konさんはそうした大きな情勢だけでなく、どんな場所や国でも難民化は起こりえると説き、そうした問題を表面化するには、当事者ではなくむしろ一般の人がその声を代弁することが重要であると語られました。
最後に登壇されたアーティストでミュージシャンのEtson Caminhaさんは東ティモールでよく使われる農具から出る音をその場でサンプルリング、ループさせながら音を組み立てていくパフォーマンスを披露されました。
プレゼンは現地の言葉で行われたため内容はわかりませんでしたが、あとから聞いたところによると彼はGalaxyというレゲエバンドのメンバーとして世界ツアーなどもしつつ、アーティストとしてもヨーロッパなどでレジデンスに迎え入れられるなど、精力的に活動されているそうです。ネット環境が遅く、ちゃんと見れてませんがGalaxyの動画はYouTubeにも上がっています。
その後のアフターパーティーは、井上も滞在しているホテルに隣接したレストランで開催されました。
バンド演奏や、現地の音楽とカポエラを混ぜたようなパフォーマンスなどもあり、他の登壇者の方々や参加者さんと交流しました。「Thanks for sharing!」と言いながら握手を求められたりした時は、プレゼンの思いが伝わったような気がしました。プラクティカルな教育の重要性についてプレゼンされたCurtisさんからも、「また東ティモールに来ることがあったら何か一緒にやろう」と仰っていただけました。機材がもつプラクティカルな魅力に彼の掲げる教育理念がフィットしていることを見抜かれての言葉だったので、自分のプレゼンを通じてそうした「気づき」につながったのなら、概ね狙い通りのプレゼンになったんじゃないかと思います。
今日の大きな喜びの一つ、横浜で開催されたFab9以来、約2年半ぶりにMarfimさんと再会しました。明日はMarfimさんとともに東ティモールを見て回ります。
機材提供:株式会社ストラタシス・ジャパン(MakerBot Mini)
(井上)