Fab11 Report – Day 2

こんにちは、FabLabShibuyaマスターの井上です。

1日目にしてワークショップの開催という大きな山場を越え、ようやくFab11の全体を回れるようになりました。午前中のトークセッションのテーマは「Making Movies」。ハリウッドの映像制作会社やゲーム会社の第一線で活躍するクリエイターが自身の活動を紹介しつつ、映像制作やストーリーテリングについて語り合っていました。

今日のレポートでは、午後に開催されたイベントやワークショップについて紹介します。1日目同様40近い数のイベントが同時開催されるので、興味のあったイベントやワークショップ、展示物を中心に紹介します。本当は一つのワークショップやイベントに通しで参加した方が主催する側には嬉しいでしょうが、いかんせん見たいものが多いので今日はハシゴします。

0807_001写真:レーザー加工機でPCBを作る

いかに簡単に電子基板を作るかについては以前から興味がありました。切削だと時間がかかるし細かい配線を削り出すのは大変です。エッチングは廃液処理という問題がつきまといます。レーザー加工機でダイレクトに基板を作れたならと考えていたところ、ちょうど「Laser PCB – How to Make a PCB with Fiber Lasers」というワークショップがあったので覗いてみました。

ここで使われていたのはTrotec社のSpeedy300 Flexという機種で、ファイバーレーザーを備えた機種で加工していました。スタッフに詳しく聞いたところ、やはりCO2レーザーで加工は不可能とのことでした(Trotec社のレーザーの場合、$1,500〜$1,600ほどでファイバーレーザー管を追加装備できるそうです)。加工方法の詳細についても聞いてみたところ、加工面を綺麗にするためにあえて弱い出力で8回かけて制作しているそうで、写真の名刺大の基板に1.5時間ほどかけるとのこと。ウチのラボでもできるかなぁと淡い期待があったのですが、少しハードルが高そうですね。

0807_002 写真:レーザー彫刻で制作された基板のサンプル

次に向かったMITメディアラボの1階ロビーでは、Tufts大学の学生が研究成果を紹介していました。

蚕の繭から純粋なタンパク質を取り出し、密度や保水量などを調整して様々な状態で固定化させる研究でした。純粋なタンパク質成分であることと、精製プロセスの中で有害な化学薬品などは一切使っていないため、人体に移植しても全く問題のない素材だそうです。サンプルの中には液体のものからペースト状のもの、ゲル状のもの、薄いフィルムのようになったものや、プラスチックのように硬いものまでありましたが、全て同じ素材からできているとのことです。また、それらの素材を目的の形状にするための研究も進めていて、任意の太さの糸に戻す装置や、改造した3Dプリンターで好きな形に造形するデモンストレーションもありました。前回参加した横浜のFab9でも感じましたが、こうしたバイオテクノロジーの分野にはかなり注目が集まっている印象です。

0807_003 写真:様々なサンプルと造形装置

次に向かったのは「Laser Micromachining」というワークショップです。

これはもう、なんというか、「すごいなぁ」という馬鹿みたいな感想しか無いです。途中参加で後ろから眺めていたので素材や機材の詳細まではわかりませんが、極小のギアを切り出していました。

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写真の解像度的に写ってないところもありますが、全部外刃もしくは内刃のギアです。肉眼でも見えなかったパーツも、顕微鏡で見るとちゃんとギアでした。もちろんただのギザギザではなく、ギア刃独特のテーパーや丸みもついています。

メディアラボの地下にあるMars Labという工房では、「Making Machines that Make」という開発中の工具の体験ワークショップをしていました。

0807_006写真:実演中のShaper

Shaperという半自動CNCルーターは、手動で大まかに形状を追いつつ、あらかじめ送ってあるデジタルデータに沿って加工されるようルーターが動きを補正する新しい工具です。写真中の材料にも貼ってあるシールを読み取りながら加工位置を検出しているそうです。また、手で動かす際に対象から大きく外れないよう、モニターが加工方向を指示してくれます。
実際に加工していたのは小さなピースですが、大きな形状も切り出せるとしたらとても魅力的です。通常のCNCルーターだとどうしても加工物よりも機材が大きくなってしまうので、このサイズで大きな加工ができたら小さなラボでも加工範囲が大きく広がります。

0807_007写真:切り出されたアルファベットの「A」

その隣ではFab Moduleによる自動スチロールカッターを使った、「Surface to Solid」というワークショップが行われていました。

0807_009写真:Fab Moduleを使った自動スチロールカッター

対象のスチロールが移動する間に、張られたニクロム線が左右それぞれ独立して上下に動き、任意の形を切り出すことができます。参加者はスチロールにおおよその加工線を描き、オペレーターはその線をRhinoceros + Grasshopperで再現して機械に送っていました。おそらく左右の異なるラインをGrasshopperでスムーズにつなげてサーフェス化しているのだと思います。

0807_010写真:切り出されたスチロールのサンプル

参加者は切り出されたスチロールに離型剤を吹いて、石膏で型取りをしていました。ワークショップのタイトル通り、正にサーフェスからソリッドをリアルに行う内容でした。

0807_011写真:石膏を流し込む参加者

いかがだったでしょうか?
実のところまだまだあるのですが、2日目にしてレポートが長文になりすぎてしまうのでこの辺りで。機材の力で成り立っているものはさておき、特に後半2つのワークショップについては実践のための道具から自分達で作っているところに底力を感じます。道具による、また道具そのものの大量生産を目標としなければ、まだまだ「道具」というジャンルには未開拓領域がありそうです。ますます作りたい欲が高まるDay2でした。

INOUE, Keisuke

2015-08-07 | Posted in blog, Events, ReportNo Comments » 

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