Fab11 Report – Day 3
こんにちは、FabLab Shibuyaマスターの井上です。
Day2のレポートではワークショップやイベントにフォーカスしたので、今回は少し目線を引いてFab11全体とその周囲の雰囲気が伝わるような内容にしていきたいと思います。Fab11はMITのキャンパスを中心にボストン市内の各地に展開して行われていますが、中心になっているのはMITメディアラボ内にある「Center of Bits and Atoms(CBA)」と、Fab Hubと呼ばれる特設テントです。
写真:Fab Hub内の様子
Fab Hub内にはスポンサーとなっている各機材メーカーがブースを出しており、それぞれの自慢の機材を使ったワークショップなども開催されています。Day2のレーザー加工機で電子基板を作るワークショップもTrotec社の企業ブースで行われていました。
写真:ミマキエンジニアリング社のブース
導電性インクのAgICと共同で出展していたミマキエンジニアリング社の企業ブースでは、導電性インクを使ったポスターサイズの電子回路を展示し、連日ワークショップを開催して常に人が群がっている印象でした。電子回路を簡単に作る方法という意味では、UVプリンター + 導電性インクも候補に挙がってきますね。
写真:Tulsa Mobile Lab
テントから外に出ると、トレーラーやコンテナを改造したMobile FabLabが置いてあります。写真のTulsa Mobile Labは、ShopBot Desktop 1台、Epilogのレーザーカッター2台、小型の3Dプリンター10台を備え、まるでカーレースで見られるピットのようなMobile FabLabでした。コンテナ側面をオープンデッキ状に展開して床面積を広げ、Mobileながら開放的でゆったりとした構成でした。
写真:Tulsa Mobile Lab内部
すぐ隣には「TIES/CMSD Mobile Fab Lab」と、こちらは少し年季の入ったコンテナ型のMobile FabLabが置いてあり、当日はShopBotのレクチャーを開催していました。FabLab Fujisawaでも使っているShopBot Buddyでレクチャーしていたので興味深く覗かせてもらいました。
写真:TIES/CMSD Mobile FabLabで開催されていたShopBotのレクチャー
一方の「Center of Bits and Atoms(CBA)」は、普段はMITの学生が使用している工房です。様々な機材や素材がところ狭しと並び、イベント中は大勢のFabLab運営者で賑わっていました。FabLabはグローバルネットワークであって中心とか本部のようなものがない、という概念は確かにあるんですが、10年以上も継続した歴史があれば自ずと「意味」や「感慨」のようなものも生まれてきます。参加者全員が、どこかここを「中心」と捉えているような、そんな雰囲気でした。
写真:Center of Bits and Atoms
少しばかりFabから目を離してみようかと、午後はほどほどにMIT周辺を散策しました。MITはボストンのチャールズ川沿いのとても気持ちのいい立地にあるのですが、そのチャールズ川に偶然写真のような水上ドローン(?)が置いてありました。Fab11とは関係なさそうですが、キャンパスを出てすぐだったので、おそらくMITの何かしらの研究用なのだと思います。
よく見ると陸揚げされている大きい方のドローンには、どう見ても3Dプリンターのようなものが搭載されています。一体何の研究なんだろう…
写真:謎の水上ドローン
写真:乗っかっているのはどう見ても3Dプリンター
散策ついでに、MITミュージアムまで足を運びました。ここには過去のMITの様々な研究成果が陳列されており、どれも当時の最先端をいく内容ばかりです。そんな最先端に囲まれて一際目を引くのがArthur Gansonのキネティックアート展示です。前回訪れた時は「特別展」だと思っていたのですが、常設なんですね。
ハイテクで緻密な理工学系の展示物の中に、一見とても拙く作られているように見えるGansonの作品。簡単そうに見えますが、決めるところはビシッと決めないと、こうも安定して動かし続けることはできません。材料特性や力の流れを、数値ではなく職人的感覚で完全に理解しているからこそ成せる業ですね。このミュージアムにこういった作品が敬意を込めて展示されているあたりに、MITの技術に対する哲学が感じとれる気がします。
写真:Gansonのキネティックアート
日が傾きかけたところでFab11に戻り、今日の山場に備えます。というのも、今日はアジア地域の新設ラボのプレゼンテーションということで、今年6月にオープンしたFabLab Fujisawaの紹介プレゼンをしなければなりません。正式なFabLabになるには、この世界ファブラボ会議で自分たちのラボやその活動を発表し、先輩ラボから拍手をもらうのが慣例となっています。日本からは藤沢以外にも浜松、太宰府、佐賀、九州大学のFabLabが発表を行いました。
写真:FabLab Fujisawaの発表を行う井上
一昨年に横浜で開催されたFab9の際にFabLab Shibuyaの発表をしたので、今回で2回目です。このラボ発表プレゼンは、「イグナイトセッション」という少し特殊なプレゼン方法をとっています。プレゼンターに与えられた持ち時間は3分、その3分間に対応した紹介用のスライドを準備するわけですが、全てのスライドを「自動送り」にしなければならいのが「イグナイトセッション」の特殊なところで、プレゼン中にスライドのコントロールはできません。3分という時間をどうデザインするかが試され、なかにはオーバータイムしたり、どもってしまったりするプレゼンターも出てきます。とにかく頭を半強制的にフル回転させるプレゼン方法で、前回も含め個人的には結構好きなプレゼン方法です。幸い会場内からの拍手ももらい、無事にFabLab Fujisawaも世界のFabLabネットワークの仲間入りができました。
明日はいよいよFab11のメインイベント、「Fab 11 Symposium: How to Make (Almost) Anything」です。
INOUE, Keisuke