【Fab12レポート】未来を創造する 〜その4〜


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今回で3回目となる世界ファブラボ会議への参加でしたが、一言で表すなら「ターニングポイント」という言葉が思い浮かびます。過去10数年の活動の結果、メイカームーブメントと言われるような情勢の一翼を少なからず担い、多くのメイカー、企業、行政の耳目を集めてきました。世界中で加速度的にFabLabが増え、作る人が増えました。これらは基盤目標(FabLab 1.0)として継続しつつも、新たな目標(FabLab 2.0〜)に主体を譲り渡したカンファレンスだったと言えるでしょう。

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Fab12の開催地となった深センは、つい30年ほど前まで小さな漁村でした。今では世界中の製造業、スタートアップ企業が拠点を構えています。カンファレンスを抜けて散策した華強北(ファージャンペイ)は、秋葉原の電気街をお世辞抜きで10倍増しにしたような物量と活気に溢れ、「物」の大鉱脈となっています。ビル1棟ほとんどスマホケースというようなところもありました。その活気を背景に今回のFab12で語られた物事は、寄り添う部分と真逆の部分が強烈なコントラストを演出し、テーマとなった「未来」の有り様について考えさせる大きな効果がありました。大量生産/大量消費のサイクルの果てにある「大量廃棄」は、世界が抱える大きな社会問題の一つとしてメディアでも度々紹介されます。見るものを圧倒する華強北の「物の山」を眺めるうち、Tomas Diezがプレゼンテーション中に見せた「廃棄物の山」と重なってきます。そうした深センのエコシステムに危機感を抱いている人々は少なからずおり、深センもまたFab Cityに加盟した都市の一つとなりました。

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4日目のFab Symposiumに登壇したHAX(ハードウェアスタートアップを支援する企業・インキュベーター)のディレクター・Duncan Tumerが、そのプレゼンテーションの中でNike iDを引き合いに「カスタマイズ」の有効性について語っていました。様々なアイデアをフィルタリングし、生き残った事業を支援するHAXは、ある意味ではニーズの最前線に立っている企業です。そんな企業が「カスタマイズ」を「可能な限り早く顧客に届ける」点にフォーカスしていたことは、これまで続けてきたデジタル加工工房&Fab湘南ラウンジ-Fab Space-の取り組みを想起させ、勇気付けられる一幕となりました。美術・工芸品のようなごく一部を除いて、ほぼすべての人工物はいずれ廃棄されます。「カスタマイズ」という手法は「循環」とまでいかないものの、ものの寿命を「延命」させる効果は少なからずあると思います。自画自賛のようですが、循環型社会に向けて出来ることを少しずつやっていくしかないのかもしれません。
 
Fab12で宣言された目標群は日本のFabLabにとっても大きな挑戦ですが、同時に日本のものづくりが抱える「苦手分野」を突かれているという印象も持ちました。様々な分野で日本は優秀なハードを世に送り出してきましたが、それらを最大限に活かすソフトやサービスを作ることができませんでした。今回のFab12が提示したターニングポイントは、ハードの終焉からソフトやサービスへの移行に、どこか重なって見えるところがありました。とはいえ、必ずしも世界が進んでいて日本が遅れているというほど単純な状況ではなく、一つ一つのFabLabを見ればどこも試行錯誤を繰り返しながらFabLab 2.0〜を目指している、というのが実際のところです。

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様々な言葉やアイデア、ビジョンが交錯したFab12でしたが、ステージ上で話す人々には共通して「世の中をもっと良くする」というモチベーションが感じられました。重要なのはそれらがボランティア精神によって語られていたのではなく、「売れる」とか「面白い」といった評価軸と同列にあるものとして捉えられていた点です。売れるための戦略、面白がられるための戦略があるように、世の中をもっと良くするための戦略を背景に、知性と情熱をもってそれぞれの言葉が語られていたように感じました。そうした戦略を立てるマインドを育むための新しいFab Academy(Why〜)、実践場としてのFab Cityが位置付けられている、というのが、井上が最後に感じた感想です。
 
このターニングポイントを機に、おそらく世界中のFabLabがそれぞれの活動を再定義し始めます。これまでがそうだったように、その変化は今後ジワジワと世の中に影響を与えるでしょう。もうすぐ4年目を迎えるFabLab Shibuyaにとっても1つのターニングポイントとして、社会との関わり方について考えさせられるFab12でした。

文・井上恵介

2016-08-16 | Posted in blog, Events, ReportNo Comments » 

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